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旅のノート★困った話
 その6・トイレはどこ?

 「やれやれ、やっとついたか」
 そう思ったとたん、トイレに行きたくなった。

 モントルーからヴィスプへ、ヴィスプから登山鉄道に乗り換えて、ツェルマットまで。普通なら約3時間の道のりだが、モントルーで発車ホームを間違えて一本乗り損なったため、4時間かかった。その間、一度も用を足していなかったのだ。
 駅周辺を見回したが、トイレは見あたらない。いいや、観光地だからどこかにあるさ、とそのまま通りを歩き出したのだが……トイレの標識がなかなかみつからない。うう、どうしよう、がまんできなくなってきたぜ。近くのレストランに飛び込もうと思ったが、その日は日曜日。店はたいてい閉まっている。

 トイレ、どこー?!

 教会前の広場まで来て、ひー、もうだめ、と思った時、ちょうど向こうからやってくる日本人の女の子に出会った。
 コンニチワと互いに挨拶した後、
 「トイレ、どこにあるか、知りませんか?」
 と、わらにもすがる思いで聞いてみた。すると彼女、
 「あら、私のホテルがすぐそこだから、よかったらどうぞ」
 天の助けとは、このことだぜ!
 「お、お願いしますっ!」

 彼女のホテルまで、そこから1分もかからなかった。着くなり、私は脱兎のごとくトイレへ直行。
 ふー、助かったぜ。もう少しでおもらししちゃうとこだった。

 生き返った気分で一息ついた後、彼女の部屋を見せてもらった。日当たりのいいベランダ付きの部屋で、

 おおーっ!

 なんと、窓から、マッターホルンの雄姿が見えるではないか!
 絵葉書そのままの絶景に、私はうるうる感激の涙をこぼしたのであった。

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